2005年05月29日

最近読んだ本 「亡国のイージス 上・下/福井晴敏」

「川の深さは」「Twelve Y.O.」で助走をつけて、ついに本命の「亡国のイージス」本を読んだ。
厚めの文庫本2巻からなるこの作品は、今夏公開の映画「亡国のイージス」の原作小説だ。

模擬戦闘を行う海域へ航海中の最新鋭のレーダー装置とミサイルを装備した護衛艦《いそかぜ》が叛乱を起こした。阻止すべく立ちはだかる僚艦を容赦なく撃沈し、搭載ミサイルを東京首都圏内に照準して日本政府に対し要求を突きつける。


「川の深さは」「Twelve Y.O.」を上回る壮大なスケールで展開するストーリー。
本作も前2作と同様、専守防衛を掲げる自衛隊の実情と限界を浮き彫りに、その存在の意味を考えさせる。

強力なミサイル兵器を装備していても、相手が攻撃してくるまでは一切の攻撃を行えない自衛隊、いや日本の法律。これは戦争により甚大な犠牲を払った日本の辿り着いた一つの道だと思う。
ただ、近年の戦闘は状況によっては最初の一発で片が着いてしまう程の破壊力を持った兵器を持つに至っているという事実にも考えさせられる。
選択を誤れば、反撃のチャンスもなく崩壊する可能性もあるのだ。
それでも、その兵器を使用するのは人間であり、人間の理性や思慮がその結果を変え得る。

日本の治安の良さは、世界でも非常に良い方だと言われ、日本人の危機意識の欠如は色々なところで取り沙汰されている。
そういう社会で育ったおいら達には、戦争の本当の怖さは分らないし、空想の域を出ない。
日頃から自分の国を取り巻く情勢や危機に関して考えを巡らせることは皆無。
福井氏の突きつける現実は、ふやけた我が身には本当に耳が痛い。ふらふら

人間の本質は急に変えることは出来ない。
でも、少しずつでも努力して変って行けるはず…という可能性は忘れてはならないだろう。


本当に面白いので、ぐいぐい引き込まれ、一気に読み終わった。目
スケールが大きいので映像化は不可能と言われていたのもよく分かるが、エンターテインメントを重視する福井氏の作品だけ有って、構成やキャラクターは映画カチンコ的だと思う。

これから読もうと思っている方には、小説を読了するまで映画「亡国のイージス」の公式サイトを覗かないことをお勧めする。
ハッキリ言って映画関係者の配慮の無さにガッカリするが、どんでん返しストーリーの非常に重要なポイントの一つが何となく想像できてしまう記載がキャストやクレジットの紹介ページに有るのだ。
折角、壮大で斬新なストーリーに翻弄されたいのに、ネタバレでは意気消沈である。

映画の公開は今から楽しみだが、「ローレライ」の時とは違って原作を先に読んでしまったので、期待を裏切らない映画になるか少し心配だ。

主人公の仙石を演じるのが真田広行というのは原作のイメージとはちょっと違うかもしれない。 冗談の似合うガタイの良いオヤジのイメージだから。
勿論「熱い」演技には定評が有るので、見応えは有ると思うけど…。

また、本作とは直接関係ないが、原作者の福井氏は続編とも言うべき「こんなもの」にも関わっているらしい。 「亡国のイージス」から 30年後に起きる事件をストーリーとする PlayStation2用のゲームなのだそうだ。
「亡国のイージス2035〜ウォーシンプガンナー〜」

posted by 太鼓屋 at 23:30| Comment(7) | TrackBack(0) | 最近読んだ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
前にも書いた通り、最近はぜんぜん小説を読まなくてこの本も読んだことないんですが、太鼓屋さんのレビュー?を読んでたらなんか「亡国のイージス」って、かわぐちかいじの「沈黙の艦隊」そっくりですね。どちらかがパクってしまったのでしょうか、、、でも、そんな内容なら読んでみたくなりました
Posted by くりぱっちん at 2005年06月01日 00:28
>くりぱっちんさん
残念ながら「沈黙の艦隊」を読んでないので、何ともコメントできませんね〜。(^^;)
割と漫画好きな方なんですが、それは読んでないですね。

yuhkiさんが両方読んでないかなぁ。(笑)
Posted by 太鼓屋 at 2005年06月01日 12:25
>yuhkiさんが両方読んでないかなぁ。(笑)
えっ。^^;;;

「沈黙の艦隊」は、それほど一生懸命に読んだわけでは無いので、あまり語る資格が無いと思うのですが、世界平和を目指した、崇高な?思想が流れていたと思います(ラストもWebを検索して思い出しました。。)

「亡国のイージス」は、自衛隊に関する矛盾等は、作品の本質的な部分で、あまり重きを締めていない無い様な気がします。(ストーリーを面白くする道具として使われているだけで)。あまり語るとネタバレになりますけど。

熱くて、いろんな背景を背負った人達が個人的な想いに基づいて、何かを成し遂げようと、一途に突っ走る。それは、個人的な恨みだったり、自分らしく生きるためだったり、それが決められた事だからだったり、有る意味みんなバラバラで、自衛隊の矛盾を訴えたりする主張は意外と、メインストリームでは無い印象を受けました。

そういう意味では、あんまり崇高な作品では無い気がします(笑)。
Posted by yuhki at 2005年06月01日 17:53
>yuhkiさん
解説どーもです!
「沈黙の艦隊」は昔ハマってしまいました。

・・・秘密裏に作られた日本初の原潜(米艦隊所属)「シーバット」。その試運転の際、突如シーバットは”独立国やまと”としてクーデターを起こす。最新鋭艦で核弾頭を搭載した潜水艦は、それを阻止しようと立ちはだかる艦船と立ち向かい、それをことごとく撃破し進んでいく。そして専守防衛しか持たない日本と同盟を結んだ後「軍事力と平和」というものの意味を世界に向けて問いかけ続ける、、、

そんな内容でした。こうして書くと似てるでしょ>太鼓屋さん

もちろんマンガなのでフィクション満載ですが、シリアスタッチでジャンル的には「思想マンガ」みたいでした。特に日本の世界に対するあり方はしつこく語られていてとてもおもしろかったです。

「亡国のイージス」にも、そんな問題提起があるのなら同種の面白さはあるのかなって思った次第です。ちなみに「やまと」は最新鋭のイージス艦にも勝利してしまいました(笑)
Posted by くりぱっちん at 2005年06月01日 23:25
「沈黙の艦隊」は読んでないので、よく分からないんですが、「川の深さは」「Twelve Y.O.」「亡国のイージス」は昨今の社会情勢を反映していると言いましょうか、北朝鮮や沖縄の米軍基地の問題が上手く織り込まれているのと、アメリカの自己都合的な横暴が描かれているのが、何となく「なるほど」と思えてしまうんですよね。

「沈黙の艦隊」って、ミニサイズの文庫になってないのかなぁ?
Posted by 太鼓屋 at 2005年06月02日 01:43
>くりぱっちんさん、こんにちは。

潜水艦アクションだったら、「終戦のローレライ」の「シーゴースト」の操艦もすごいです。「そんなの不可能だろ(笑)」みたいな戦闘シーンがたくさんあります。

「亡国のイージス」では、「自衛隊の限界」の為に、攻撃もできずに無駄に死んでいく人が出てきます。実際には何も守る事ができない軍事力という矛盾を露わにします。
まさに、キャッチコピーの「見ろ、日本人よ。これが戦争だ」の通りの展開を見せます。

発表された当時は、あまりに政治的な矛盾を露わにしすぎているため映画化は無理という事が良く言われていて、私もそう感じましたが、今回の映画化は自衛隊の協力も得られた様です。

時代は変わっていくものなんですね。矛盾は変わっていないのですが。
Posted by yuhki at 2005年06月02日 09:01
上の方で、

 >北朝鮮や沖縄の米軍基地の問題が上手く織り込まれているのと、
 >アメリカの自己都合的な横暴が描かれているのが、何となく
 >「なるほど」と思えてしまうんですよね。

と書いたおいらですが、そう書きながらも、フィクションとは言え、アメリカをここまで悪者に書いて良いものかなぁ…とも感じてしまう気持ちも有ります。(小心者ですね ^^;)
Posted by 太鼓屋 at 2005年06月03日 05:34
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